【イヌ】お腹が膨らんで苦しそう(胃拡張捻転症候群とは)②
2022.8.11 -[症状から考えるシリーズ]
開業から3年が経ち、4年目に入りました。
夜、全員が帰った後に院内を見回して感慨深い気持ちに…はならず、あちこちの汚ればっかり気になってしまう獣医師youです。
登場人物紹介
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:筆者です。妻さんがそれなりに出勤するようになった。
とにかく床の汚れが気になる。
全力で床を磨きたい。
:動物看護師長。おたアヒドグーのママ。
昔と変わらない。(獣医師you目線)
みたいなことをスタッフの前で言うからいけないんですよね。
:おたま。相変わらずのプクプク4歳児。
:アヒル先生。赤ちゃんに興味はあるが、自分の方が大事な1歳半。
:ドグーさん。ミルクを飲んで(上からも下からも)出すだけの簡単なお仕事です。0歳児。
:3年前には1歳だったおたまちゃんには2人の手下ができました。
:訳あって集まってきた動物たち。
:10歳を超えて、なんとなくトシを感じるようになったつみれさん。
:昔と変わらない勢いでつみれさんに突進して嫌われるうなぎさん。
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多くの方の応援のおかげで、3年目を無事に終えることができました。
多少、命を削られることは覚悟の上でしたが、思った以上に老けてて笑ってしまいました。
でもどこかで「まぁ、いつか休めば元に戻るでしょ」と思っています。
(それは妖怪と呼ばれます。)
3日ほど休めば元に戻れますでしょうか。
(立派な妖怪です。)
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さて、今週もあの有名()な緊急の病気、胃拡張捻転症候群について書いていきます。
どんな病気か、前回の記事で書いています。
【イヌ】お腹が膨らんで苦しそう(胃拡張捻転症候群とは)①
死亡率がとても高く、家で様子見するメリットがこれっぽっちもないというのが前回のお話でした。
もう少し掘り進めて、実際の検査などは何をするのか解説していきます。
○胃がねじれただけで死んじゃうの
前回、お話しし忘れていたので。
胃がねじれるって言っていますが、胃の周りには大きな血管や神経、臓器がつながっています。
例えば、血管だけについて考えた場合、胃と共に血管がねじれて血液の流れが止まってしまいます。
血流が止まると、胃はもちろん各臓器へ栄養が行き渡らなくなり壊死してきます。
それもかなりの短時間で。
さらに、胃の中にはガスがパンパンに溜まってきますので、ねじれていない血管も圧迫されるようになって悪化が進みます。
これだけでも、死亡するには十分な理由なんです。
○さて、診断はどう進めていく
基本的には、症状と飼い主さんへの問診で疑っていくことになります。
もちろん、現状の把握や病気の確定のために様々な検査もします。
一番、有用なのはレントゲン検査。
ガスがパンパンに詰まった胃が映ってくるのですぐにわかるはず。
現状の把握(あちこちの臓器への影響)には血液検査を行います。
その他にも、エコー検査や心電図検査を行うこともあります。
○急いで治療に入りましょう
恐らく、病院で診断される頃にはあまり元気がない状態のはず。
緊急の処置が必要になります。
①静脈点滴
多くの場合、血液の流れが悪くなっているので、点滴をすることで循環を改善させていきます。
ただし、心臓が悪い場合には強心薬などを併用しながら少量の点滴で様子を見ていきます。
②胃の減圧
パンパンになった胃をなんとかしないといけません。
針を刺して空気を抜くか、口からホースを入れて胃の中身を抜いてあげる必要があります。
完全にねじれてしまっている場合には、ホースは入らないので次の処置に入る必要があります。
③手術
開腹手術で胃を正常な位置に戻し、さらには再発を防ぐために胃を固定する必要があります。
胃の固定をしなかった場合の再発率は80%とされているので、開腹手術をするなら必ず固定をした方がいいでしょう。
固定を行った場合の再発率は10%未満と言われます。
つまり、ここまでやっても再発することは有るということも忘れてはいけません。
やることはそんなに難しくはないのですが、超えなくてはいけない山がいくつもあるので、とても緊張する病気です。
ちなみに、手術までやってもその後がまた大変なんです。
次回は、治療のその後について解説します。
また来週
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“明日から使える生き物の不思議クイズ
”
Q;カンガルーは、お腹の袋からなかなか出ていかない子どもをどうするでしょう
A:袋をダラっとさせて居心地を悪くする
B:咬みついて追い出す
C:とにかく辛抱強く待つ
A;
乳離れができないというか、親離れというか、これができないのは人間でもよくある話。
カンガルーさんでも、お腹の中が気持ち良すぎて大きくなってもなかなか出ていかないことがあるようです。
そのようなときは、袋をダラッとさせることで、袋の中に居られないようにするそうです。
袋は、元々お腹のシワが変化したものなので、そんなことができるんです。
ということで、答えはAの「袋をダラっとさせて居心地を悪くする」でした。
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〜番外編〜
「幸せの一粒」
我が家のうなさんはかなり太りやすい体質のようで、
肥満児になるのを防ぐべく、ストイックな食事制限を強いられています
そのため、いつでもお腹はやや空き気味。
我々の寝室にしまわれているごはんやおからの猫砂を常々狙っています
そんなうなさんとは打って変わって、気まぐれ食べのつみさん
どんなにご飯が積まれていても、食べたくなくなったらいらない派なので、勝手に食事制限をしてくれます。
そんな我が家の食事法はうなさんに合わせて「決まった時間に決まった量を」スタイル。
また、ふたり同じ場所ではなく、決まった配置であげています。
ここ最近、つみさんが一粒だけごはんを残すように…
一粒だけ残して満足した様子で眠りについてしまいます。
それを食いしん坊で飢えているうなさんのレーダーが感知しないわけなく…
こちらをチラッチラッと確認し、怒られないことを察すると「にゃっ」と一声鳴き、残された一粒を静かに食べます
その後、とっても満足げな顔をして、寝床に着きます
その残された幸せの一粒は、つみさんの優しさの一粒かもしれません
「いや、単純に気づいてないか、お腹いっぱいになっただけでしょ」
今週も獣医師youの優しくない一言が炸裂したところで、
最後まで読んでいただきありがとうございます!
また、来週